気候変動対応の取組み

気候変動に対する認識

2015年に採択されたパリ協定等で示されるように、気候変動の進行は科学的事実であり、気候変動関連課題への取組みに対する社会的な要請が高まっています。
気候変動の進行がもたらす気象災害の激甚化や排出規制の強化等により、自然環境と社会構造が劇的に変化することが予想されるため、気候変動は本投資法人及び本資産運用会社の経営と事業に重大な影響を与える中長期的な重要課題(リスク)であると認識しています。
このような認識のもと、本投資法人及び本資産運用会社は、「サステナビリティ方針」において「気候変動への適応」を掲げ、気候変動関連課題への取組みを推進しています。また、「気候変動関連課題対応ポリシー」を制定し、長期的にパリ協定で定められた国際目標を支持し、気候変動の緩和に貢献するため、温室効果ガス排出の2050年までのネットゼロ実現に向けた取組みを継続的に推進します。

TCFD賛同表明

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは、G20 の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された国際イニシアチブです。TCFDは、企業等に対し、気候変動関連リスク及び機会に対する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示することを推奨する提言を公表しています。
本資産運用会社は、パリ協定で定められた国際目標を支持し、気候変動の緩和に貢献するために温室効果ガス排出量の削減に向けた取組みを継続的に推進する意思を公式に表明するため、2023年2月にTCFD提言への賛同を表明しました。
また、本資産運用会社は、国内の賛同企業による組織であるTCFDコンソーシアムにも参加していました(TCFDコンソーシアムは、2026年4月1日より後継の枠組みである「GX フューチャー・コンソーシアム」へ移行)。TCFD自体は2023年に解散しましたが、引き続きTCFDの提言に倣い、気候関連の情報開示や取組みを推進していきます。

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ガバナンス

本資産運用会社は、気候変動関連のリスクと機会に対応するために、ガバナンス体制を以下のとおりに定めます。

  • 気候変動関連課題を監督する最高責任者は、サステナビリティ推進に係る最終決定権限者である代表取締役社長とする。
  • 気候変動関連課題に係る執行責任者は、サステナビリティ推進に係る執行責任者である運用部長及び企画部長とする。
  • 気候変動関連課題に係る執行責任者は、サステナビリティ委員会において、気候変動による影響の識別、評価、リスクと機会の管理、適応と緩和に係る取組みの進捗状況、指標と目標の設定等の気候変動対応に関する事項を、気候変動関連課題に係る最高責任者に対して、定期的に報告する。サステナビリティ委員会において審議、検討した上で、気候変動関連課題に係る最高責任者により意思決定を行う。

サステナビリティ委員会の概要については、「サステナビリティ方針・推進体制」の「サステナビリティ推進体制」をご参照ください。

戦略

参照シナリオ

本資産運用会社は、気候変動関連のリスクと機会の特定のために、次の2つのシナリオ(未来像)を使用しました。

脱炭素社会への移行シナリオ

産業革命以前と比較して世界全体の平均気温上昇を1.5℃以下に抑制するシナリオ(1.5℃シナリオ)。持続可能な低炭素社会へと移行する過程で生じる社会・経済の構造的変化によって、投資家や企業が将来的に直面する可能性があるリスク(移行リスク)への対応が求められます。移行リスクは、以下のリスクで構成されます。

リスク 概要
政策・法規制リスク 脱炭素に向けた政策・法規制の強化に対応するために、事務負担や費用が増加するリスク
技術リスク 脱炭素に関する技術革新により、既存の技術や製品等が陳腐化するリスク
市場リスク 原材料の高騰等によるコスト上昇や、特定の製品・サービスに対する顧客の需要変化に関するリスク
評判リスク 脱炭素化への取組みが不十分なためにステークホルダーからの評判が低下し、弊害が生じるリスク

気候変動進行シナリオ

産業革命以前と比較して世界全体の平均気温が4℃上昇するシナリオ(4℃シナリオ)。気候変動がもたらす自然災害、気象条件の変化、または海面上昇などによって引き起こされる直接的な損害や危険性に関するリスク(物理的リスク)への対応が求められます。物理的リスクは、以下のリスクで構成されます。

リスク 概要
急性の物理的リスク 台風や洪水等、突発的な気象災害の増加により被害が発生するリスク
慢性の物理的リスク 海面上昇や熱波等、長期的な気候パターンのシフトにより被害が発生するリスク

本資産運用会社はIEA(国際エネルギー機関)が公表するWorld Energy Outlook 2024やIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が公表する第6次評価報告書を参照し、シナリオ分析を行いました。

シナリオ 参照シナリオ 世界観
移行リスク 物理的リスク
1.5℃シナリオ IEA NZE2050 IPCC SSP1-2.6 脱炭素関連の政策が急速に強化され、技術転換が進展し、移行リスクが大きく増加する一方で、排出削減が進み気温上昇が抑制され、物理的リスクの増加は限定的にとどまる
2.4℃シナリオ IEA STEPS IPCC SSP2-4.5 現行政策のまま推移し、脱炭素社会への移行は緩やかで、移行リスクは中程度にとどまる。物理的リスクは1.5℃シナリオと比較すると増大する
4℃シナリオ - IPCC SSP5-8.5 排出増加が続き地球温暖化が進行し、異常気象の激甚化など物理的リスクが大きく増加する

気候変動関連リスク及び機会の特定並びに財務的影響

本資産運用会社は、シナリオ分析を踏まえて特定したリスクと機会による本投資法人への財務的影響を以下のとおり評価しました。
(左右スクロールで表全体を閲覧できます。印刷にはこちらをご利用ください。)

移行リスク

不動産運用におけるリスクと機会 区分 財務的な影響 リスク管理、対応策、取組み
影響内容 2.4℃シナリオ 1.5℃シナリオ
短期 中期 長期 短期 中期 長期
政策と法 カーボンプライシングの強化・導入 リスク 炭素税等の導入・強化による、エネルギー消費量やGHG排出量に
応じたコスト負担の増加
・省エネ機器・設備の導入
・再生可能エネルギーの導入
・物件利用者の省エネ意識向上を推進
・エネルギー消費量のモニタリング及び省エネ診断の実施
・環境認証の取得推進
・環境性能の高い物件への入替
既存不動産における省エネ基準の強化 リスク 対応のための改修費用の負担増や場合によっては罰金が課される
温室効果ガス排出量及びエンボディドカーボンに関する算定・報告/
開示要求の強化・制度化
リスク 報告対応に伴う外部委託費用や社内対応人数の増加により、
事業経費が増加
海外法令規制への対応 リスク 法令違反によって制裁を受けるおそれがある
対応の遅れを指摘されて投資家からの評価が下がる
・外国法事務弁護士への確認や当社海外拠点との連携を強化する
技術 再エネ・省エネ技術の進化・普及 リスク 保有物件の設備が技術的に時代遅れになるのを防ぐために新技術
導入の費用が増加する
・再エネ・省エネ技術分野に知見のある外部コンサルを活用する
・経験豊富な社内エンジニアを採用する
・先端的技術を活かした製品・サービスを提供する事業者を活用する
・補助金の活用も含め、オペレーターと協働して対応を推進する
再エネ・省エネ技術の進化・普及 機会 環境性能向上による光熱費の削減
市場 不動産鑑定への環境パフォーマンス等の基準の導入 リスク 環境性能が低い場合に鑑定評価額が下がり、NAV (Net Asset
Value) が低下する
・省エネ機器・設備の導入
・再生可能エネルギーの導入
・物件利用者の省エネ意識向上を推進
・エネルギー消費量のモニタリング及び省エネ診断の実施
・環境認証の取得推進
・環境性能の高い物件への入替
・グリーンファイナンスの実施
・ESG格付の評価向上
・気候変動関連の情報開示を充実化
・満足度調査の実施と調査結果に応じた改修・改善
・ホテルオペレーターやPMとの情報共有・連携強化
・保有物件におけるサステナビリティ関連の取組みとアピールを強化する
気候変動に対応していない市場参加者の調達条件悪化 リスク 資金調達コストの上昇
新規投資家層の開拓 機会 グリーンボンドの活用
環境問題を重視する投資家への対応・訴求による資金調達量の
増加、調達コストの低下
光熱費(外部調達の再エネを含む)の上昇 リスク 事業経費の増加
敷地内再エネの導入 機会 外部調達する光熱費の削減
ホテル利用者・テナント・入居者の需要変化(より気候変動への対応が
進んだ物件を選択する、または対応していない物件を避ける)
リスク ホテル利用者のニーズ充足のためのコスト増加
未対応による顧客離れ、新規テナント・入居者獲得の困難化
リテンション率の低下による賃料収入の減少
環境性能や環境配慮を重視する傾向が強まることによる資材や人材の
調達環境の変化
リスク 対応コストの増加による事業経費の増加
環境性能の高い資材の不足
環境配慮が不十分なことによる人材の採用難
評判 気候変動への対応の遅れによる物件のブランド価値及び企業イメージの低下 リスク ブランド力による賃料プレミアムの減少
低排出な設備・仕様・サービスの提供を通じた、ホテル利用者・入居者からの
評価向上によるブランド価値の向上
機会 新規顧客の獲得や稼働率の維持・向上による収益増

物理的リスク

不動産運用におけるリスクと機会 区分 財務的な影響 リスク管理、対応策、取組み
影響内容 4℃シナリオ 1.5℃シナリオ
短期 中期 長期 短期 中期 長期
急性 集中的豪雨による内水氾濫や近傍河川の氾濫等による浸水、
台風による風害、降雪による雪害により、物件が被害を被る
リスク 修繕費・保険料の増加、稼働期間の減少に伴う営業の機会損失、稼働率の低下 ・防災、減災施策の実施
・ポートフォリオのエリア分散を図る
慢性 海面上昇の進行 リスク 浸水による営業停止・稼働不能に伴う賃料収入の減少 ・防災、減災施策の実施
・ポートフォリオのエリア分散を図る
・影響度合いを踏まえて物件売却を検討する
猛暑日や極寒日など極端気候の増加により空調需要が増加 リスク 水光熱費、メンテナンス関連費、修繕費の増加 ・高効率空調機器の導入
気候変動によるリゾートエリアへの影響 リスク リゾートエリアの観光資源に悪影響を及ぼす事象が発生すること
による旅行需要の減少、稼働率の低下
・ポートフォリオのエリア分散を図る
・影響度合いを踏まえて物件売却を検討する
レジリエンス 防災機能を備えた物件の提供
地域社会との連携
機会 災害対応・非常用電源等を備えた物件への需要増(BCP重視のテナント選好)
物理的リスクへの対応が進むことで、保険条件や修繕コスト等の面で
中長期的に優位性が生じる可能性
・地域イベントへの参加等を通じて地域社会との関わりを深める
・地域の環境保全活動に関与する
(注1)
将来予測における不確実性や未知のリスク等により、上記の財務的影響の評価の正確性を保証するものではありません。
(注2)
各シナリオ( 1.5℃, 2.4℃, 4℃ シナリオ)下での物理的リスクの影響度は評価していますが、影響の幅を示すため、1.5℃、4℃シナリオ下での評価を示しています。

気候変動関連リスク及び機会に対応するための取組み

上記のリスクと機会に対し、本資産運用会社は環境目標を掲げると共に、環境負荷低減のための各種施策に取り組んでいます。詳細については、「環境への取組み」をご参照ください。

リスク管理

本資産運用会社が気候変動関連リスクを管理するプロセスは以下のとおりです。

気候変動関連のリスクと機会を特定、評価するプロセス

必要と思われる部署の担当者で構成されたワーキンググループが移行リスクと物理的リスクの分類に基づきリスクと機会を特定・評価し、サステナビリティ委員会において、その進捗や結果を報告します。

気候変動関連リスクの管理プロセス

気候変動関連課題に係る最高責任者は、サステナビリティ委員会で審議された事業、財務計画上重要な優先順位の高い気候変動関連のリスク及び機会について、対応担当部署または担当者を指定し、その対策案の策定を指示します。対策案は、その内容に応じてサステナビリティ委員会あるいは社内の適切な会議体において審議の上、実行するものとします。

全社的なリスク管理プログラムへの統合

気候変動関連課題に係る最高責任者は、事業、財務計画上重要な気候変動関連リスクを既存の全社リスク管理プログラムにおいても考慮するよう指示し、リスクの識別、評価、管理プロセスの統合と監督を図ります。

指標と目標

本資産運用会社はリスクと機会を管理、モニタリングするために重要な指標(KPI)と目標を設定しています。指標、目標及び実績については、「環境への取組み」の「環境目標」及び「環境パフォーマンス」をご参照ください。